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「脱ひきこもり」お役立ちコラム

年度末には「激励」ではなく「労い」の言葉を。

松隈 信一郎(医学博士)

福岡県出身。慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程にて幸福感や強み等、人間のプラス面を科学するポジティブサイコロジーを研究。在学中より従来のカウンセリングではない、ポジティブサイコロジーコーチング(PPC)による不登校・ひきこもり支援の可能性を見出す。その後、一般社団法人ストレングス協会を設立。10代、20代の若者に特化した訪問支援と教員・保護者へのPPCの教育を通して、世界中の青少年が希望をもてる社会の実現に向けて活動を続ける。著書に『「強み」の見出し方』(「月刊精神科」2017年7月号)等。

 

お正月がついこの前だったはずなのに、もう気がつけば3月ですね。10代の不登校のお子様であれば、進級・進学についての話し合いが始まる時期であり、20代のひきこもりのお子様であれば、これからの方向性について、一つの結論を出さないといけない時期なのかもしれません。ずっと不登校だったり、ひきこもりの状態であった子達も「心機一転、ゼロからやり直せる」という気持ちになり、やる気を出す子が多い時期でもあります。私がこれまで関わってきたお子様を見ても、他の月よりも年度の変わり目は一歩前に歩きたくなる時期のようです。

この年度の変わり目のタイミングは、彼らを支える親御様としても見逃したくないところですよね。実はお子様本人も「このタイミングで変わろう」と思っているケースが多いのです。しかし、それは内心思っているだけであり、行動として表に現れないことがほとんどです。ですから、朝起きる時間が変わったり、夜寝る時間が早くなったり、そのような前向きな変化が見られないため、親御様としてはドンドン自分自身の「期待」によって、自ら苦しくなってくる、イライラしてくることが「ある・ある」です。

 

この年度の変わり目は特に彼らの外側に現れている行動を見るのではなく、その心の奥にかすかに光る「意欲」を大事にしたいところです。風が強い日にロウソクの火を守るように、消えてしまいそうな僅かな意欲をやさしく守りたいところです。そのために彼らの行動を見てジャッジするのではなく、「本人も今、変わりたいと思っているのに自信がないんだろうな、変わることに恐怖を感じているんだろうな」ということを前提に彼らを見て頂きたいなと思います。なぜなら、その視点で不登校やひきこもりの彼らを見始めると、かける言葉も自ずと変わってくるからです。「来年度からどうするのよ」「4月からは家を出ていってもらうからね」ではロウソクの火がシュッと消えてしまいます。不登校やひきこもりのお子様の行動に変化が現れる前に、親御様が火を消してしまうこともあり得ることなんです。(「もう、今からやろうと思ってたのに!」とお子様が怒り出す時がその典型例)

 

年度の変わり目、ロウソクの火が僅かでも付きやすい時期です。私だったら、ここは「期待(こうなってほしいと願うこと)」ではなく、「感謝(ありがとうと思えること)」の言葉を使いたい。「激励(来年度から頑張りなさい)」ではなく「労い(一年間、よく耐えたね)」の言葉を使いたい。心の奥にあるわずか「意欲」を焚き付けるために、「ロウソクの火」を合言葉に接してみませんか?