お問い合わせはこちら

「脱ひきこもり」お役立ちコラム

元農水次官の事件でご心配になられた親御様へ

松隈 信一郎(医学博士/公認心理師)

福岡県出身。慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程にて幸福感や強み等、人間のプラス面を科学するポジティブサイコロジーを研究。在学中より従来のカウンセリングではない、ポジティブサイコロジーによる不登校・ひきこもり支援の可能性を見出す。その後、一般社団法人ストレングス協会を設立。10代、20代の若者に特化した訪問支援と教員・保護者へのポジティブサイコロジーの教育を通して、世界中の青少年が希望をもてる社会の実現に向けて活動を続ける。著書に『「強み」の見出し方』(「月刊精神科」2017年7月号)等。

 

2019年5月に川崎市多摩区登戸で51歳の男性が「カリタス小学校」に通うためスクールバスの子どもを襲った事件、それに続く、東京都練馬区で起きた元農水次官の息子殺傷事件と胸を痛める出来事が続き、メディアでも「中高年のひきこもり」や「8050問題」が連日のように取り上げられています。

 

このコラムを読んでくださっている多くの方は不登校やひきこもりのお子様と暮される保護者の方だと思います。上述の2つの事件を見聞きする度に、「まさかうちの子も」とお子様が中高年でないにしても、ご心配になられている方も全国には多くいらっしゃるのではないでしょうか。メディアの報道も分かりやすく伝えるために「ひきこもり」とその人物を表しているため、ご心配になられるのも当然かと思いますが、私は一概に「ひきこもり」=「凶悪な犯罪を犯しかねない人」と単純に紐付けるのは、ちょっと待ったと思うのです。「ひきこもり」はその人物を表すパーソナリティ(性格)ではなく、あくまでも「状態」を指す言葉です。ですから、「ひきこもり」でもその性格は人それぞれ異なりますし、また性格だけでなく家庭環境や置かれている状況等、非常に大きく影響するため、全員が長年ひきこもったら、殺人を犯すというのは論理的ではありませんし、中高年のひきこもりで殺人を犯していない人の方がマジョリティだという事実を冷静に見て欲しいと思います。また、元不登校でも大人になって働いている人、普通にいますよね。

 

今回の川崎の殺傷事件と元農水次官の事件というメディアの影響によって、さらにご不安に感じられるのは至って自然なことだと思いますし、人間ですから、この先、どうなるんだろうとご心配になられるとは当然だと思います。一方、この川崎と元農水次官の事件のメディア報道によって駆り立てられた、さらなる「不安」や「心配」という感情が、今の自分やお子様にとって役に立つのであれば、その「不安」と「心配」を大事にされてください。もし役に立つものでなければ、その余分な感情は流して、感情や気分に振り回される時間を減らす必要があるかもしれません。もし、この助長された不安や心配という感情が役に立たないのであれば、ゆっくり深呼吸しながら、「あ~今、私、この中高年のひきこもりの事件をみて不安に感じているなあ~」「そりゃそうだよな~、こんなニュース見ると不安になっちゃうよね」と一歩、引いて自分を外から眺めてみてください。まずは、その地点に戻ってくることから始めませんか?

 

「中高年ひきこもり」という課題は、一概に子どもが悪いとか親が悪いとかではなく、「社会病理」(日本社会の構造や日本人の観念に起因する問題)だと個人的には思っています。現に「Hikikomori(ひきこもり)」は今や、英語にもなっているほどです。「社会」が作り出している問題をご家庭内の責任だけにして解決させようとするのはおかしな話だと思っています。「人さまに迷惑をかけたらいけない」という古ぼけた価値観は一旦、横において、ちょっぴり勇気を出して、「社会」(役所や福祉、身近にいる人、支援団体等)を頼ってほしいと思っています。