不登校・ひきこもりの心理① 自尊感情を測定する

松隈 信一郎(医学博士)
福岡県出身。慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程にて幸福感や強み等、人間のプラス面を科学するポジティブサイコロジーを研究。在学中より従来のカウンセリングではない、ポジティブサイコロジーコーチング(PPC)による不登校・ひきこもり支援の可能性を見出す。その後、一般社団法人ストレングス協会を設立。10代、20代の若者に特化した訪問支援と教員・保護者へのPPCの教育を通して、世界中の青少年が希望をもてる社会の実現に向けて活動を続ける。著書に『「強み」の見出し方』(「月刊精神科」2017年7月号)等。
よく「不登校やひきこもりのお子様の心理がわからない」と親御様からお伺い致します。現在、不登校だったり、部屋に引きこもっている状況の中、お子様がどのようなご心境なのかを知りたくなるのも、無理もございません。
しかし不登校やひきこもりの心理状況は時期や個人差もあるため、一概に述べることはできませんし、また不登校やひきこもりのお子様ご自身も自分自身の心理状況がわからない方も多くいらっしゃるのも事実です。ただ、これまで出会ってきた子ども達に共通する心理が一つあることも事実なのです。
それは「自分はダメだ」という劣等感。別の言い方をすると「自分には価値がある」という自尊感情や自己肯定感が低い子が非常に多いのです。
ストレングス協会では訪問支援開始前と終了時にこの「自尊感情」を心理学などの研究で使用される実証された質問票に回答してもらうことで不登校やひきこもりの子達の心理を「見える化」します。実際に使用する尺度は「ローゼンバーグ自尊感情尺度」という最も論文で多く用いられている尺度です。
【ローゼンバーグ自尊感情尺度】
1. 少なくとも人並みには価値のある人間である
2. 色々な良い素質を持っている
3. 敗北者だと思うことがある
4. 物事を人並みには、うまくやれる
5. 自分には自慢できるところがあまりない
6. 自分に対して肯定的である
7. だいたいにおいて、自分に満足している
8. もっと自分自身を尊敬できるようになりたい
9. 自分は全くだめな人間だと思うことがある
10. 何かにつけて、自分は役に立たない人間だと思う
(山本ら (1982) 教育心理学研究. 30(1), 64-8.)
この自尊感情尺度は10点~50点で計算され、数の大きい方が自尊感情が高くなります。ストレングス協会では、この質問票を不登校やひきこもりのお子様に訪問支援前後で受けてもらい、心理状況を把握したり、訪問支援の効果を検証するのに役立てており、またストレングス協会はお子様が「自分には価値があること」に気づかせることでひきこもりから前進するアプローチであるため、この質問票の各項目に重点を置いています。
以下、実際に訪問支援を修了し、ひきこもりから前に進み出したお子様の結果です。
ある高校2年生の不登校のお子様(都内在住:17歳)は訪問支援開始前、21点であったスコアが29点まで上がり、その理由を「自分の強みの活かし方がわかったから」とコメントしていました。
またある18歳のお子様(神奈川県在住)は5回の訪問支援を修了した後、3ヶ月後にもまた同様のアンケートを実施しましたが、確実に自尊感情が上がっていました。その心理状況の理由を伺うと、「5回目を終えた時は自分自身に対して半信半疑な部分があったけど、学校で実際に強みを活かして成功体験を積んできたから、高くなったと思う」というコメントを残しています。
ポジティブサイコロジーの研究では、「強み」を活かすことと自尊感情には強い相関関係があることが多くの論文で報告されています。
ストレングス協会はこの知見に従い、不登校・ひきこもりのお子様の心理状況に重要な変化をもたらしていく訪問支援です。ですので「自分はダメだ」と思い込んでしまっている一人でも多くのお子様と出会えることを願っています。
「強み」を見出し、自尊感情を高め、ひきこもりから歩み出す・・・ここからはじまる道があります。
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