ご相談はこちら

「脱ひきこもり」お役立ちコラム

中学生や高校生が留年することよりも大切なこと

松隈 信一郎(医学博士/公認心理師)

福岡県出身。慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程にて幸福感や強み等、人間のプラス面を科学するポジティブサイコロジーを研究。在学中より従来のカウンセリングではない、ポジティブサイコロジーによる不登校・ひきこもり支援の可能性を見出す。その後、一般社団法人ストレングス協会を設立。10代、20代の若者に特化した訪問支援と教員・保護者へのポジティブサイコロジーの教育を通して、世界中の青年が希望をもてる社会の実現に向けて活動を続ける。著書に『ポジティブサイコロジー:不登校・ひきこもり支援の新しいカタチ』(金剛出版)、『「強み」の見出し方』(「月刊精神科」2017年7月号)等。

 

不登校やひきこもりの中学生、高校生たちと関わっていく中で、彼らの主体性を育むことがいかに大切であるかを考えさせられることがよくあります。「これまで全て親が決めてきたので自分で判断ができないんです」「黙っていても親がやってくれていたんで」と、ある種の罪悪感を感じながらお話をしてくれる子達がいます。今、このコラムを書いているのは1月下旬。特に今、不登校の中学生、高校生にとって、これから4月の新年度に向けて進級や転校について向き合わなければいけない時期の真っ只中にいらっしゃるお子様も多いかと思います。親御様も「期限」が近づき、ご不安に感じられる方も多くいらっしゃるかと思います。

 

「今の学校を辞めるなら辞める。転校するなら転校すると早く決めてほしい。」

「提出書類の期日もあるんだから。」

「もう学校には拘らないからせめて高卒だけでも」

 

返事をしてほしいけれど、お子様から何も言ってこない・・・よくあるお話です。

 

お子様からすると、「これまでそっちが全部決めてきたくせに、ここにきて自分で決めろって言われてもどうすればいいんだよ」と思われているかもしれません。「どうせ『こうしたい』って言っても否定してくるんでしょ」と思われているかもしれません。また、親御様にとっても「小さい頃から物静かな子だったので、私達が全て決めてきてしまったんです」と罪悪感を持たれている方もいらっしゃるかもしれません。

 

この状況、「鶏が先か卵が先か」で犯人探しをしても何も始まりません。もし小さい時からお子様が活発で言いたいことを言う子だったら、親御様も決める必要がなかったかもしれませんし、親御様が小さい時から「どうしたい?」と待って彼らの選択を尊重していたら、お子様も自分で決める力が身に付いていたかもしれません。この辺りは本当に「鶏が先か卵が先か」で、いくら原因を探したとしても「たられば」の世界になってしまいます。

 

ここで1つだけお伝えできることは、不登校の中学生や高校生でひきこもりの状態から前に踏み出し、自分の足で歩いている子達を見ていると、やはりその進むべき道は自分たちで決めています。中学生、高校生でまだ未成年とは言えども、親御様が焦って進路を決められるのではなく、自分で決めている子達がやはり前に進み出した後も歩き続けています。過去に出会ったお子様でも、中学高学年から不登校になり、数年間、ずっと親とも話さずふさぎ込んでいたけれど、自ら「変わりたい」と18歳の時に通信制高校に入学していった子もいれば、高校入学して間もなく中退し、1年間、誰とも話さず悶々と悩んだ挙句、自ら当会にお問い合わせをしてきてくれた子もいました。時間がかかってもお子様が自分で決めること、これが何より大切なことだと痛感しています。

 

今、中学生や高校生の不登校の親御様で進級や進路の話がお子様と先生との間でできない、もしくは、親御様から先生の伝言を伝えても返事してこない時、(第三者だから言えることだと重々承知していますが、)ちょっと肝据えて、「この子はどういう判断をしてくるか」を観察して頂きたいと思います。退学、留年しても、その子の人生は続いていきます。「この子、留年すると下の子達とうまくやっていけなくて、ますます・・・」「退学したらますます・・・」と親御様が先回りしてお考えになられるより、いかに目の前の子の主体性を育んでいくかの方が「一人の人間としての成長」を考慮すると遥かに重要なことです。もし、学校以外の話題でお話できるのであれば、「今晩、魚とお肉、どっちがいい?」「何が食べたい?」等、本人に選択させる機会を与えてください。そして、自分が選ぶという練習をさせてください。親御様も中学生や高校生の時の自分と今の自分が異なるように、彼らも皆さんくらいのご年齢になるまで、色んな経験を積んで変わっていきます。ですから、今は周りの大人が先回りをするのではなく、本人が決める、自ら選ぶ練習をさせてほしいなと思っています。

 

※ 「頭ではわかるんだけど、やっぱり」とご不安に思われる親御様も多くいらっしゃるかと思います。もし、誰にも相談することができない状況でしたら、一度、ご相談フォームより、ご連絡頂ければと思います。状況を踏まえて一緒に考えていきましょう。