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「脱ひきこもり」お役立ちコラム

不登校生にお勧めする日々の過ごし方:「これからの社会」から見てみる

松隈 信一郎(医学博士/公認心理師)

福岡県出身。慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程にて幸福感や強み等、人間のプラス面を科学するポジティブサイコロジーを研究。在学中より従来のカウンセリンではない、ポジティブサイコロジーによる不登校・ひきこもり支援の可能性を見出す。その後、一般社団法人ストレングス協会を設立。10代、20代の若者に特化した訪問支援と教員・保護者へのポジティブサイコロジーの教育を通して、世界中の青少年が希望をもてる社会の実現に向けて活動を続ける。著書に『「強み」の見出し方』(「月刊精神科」2017年7月号)等。

 

毎日、家にずっといる不登校の中高生の多くが昼夜逆転していたり、ベッドの上でスマホをいじっていたり、学校の課題をしていなかったりと生活リズムが崩れていて、ご心配されている親御様も多いのではないかと思います。少なくとも復学に向けて朝だけは時間通りに起きてほしい、学校に行かない分、課題だけはやってほしい、食事だけは毎回しっかり食べてほしい等、色んなことを思われるけれど、その通りにはならないお子様の姿を見るたびに、イライラを募らせてしまうことも、もしかしたらあるかもしれません。今回は不登校生にお勧めする「家での過ごし方」について、お話できればと思っています。勿論、お子様やご家庭の状況によって異なるため、詳しく「朝は〇〇して、昼は〇〇して・・・」とお伝えすることはできないのですが、「こういう視点でお子さんの日々の過ごし方を見られたら、また違ったものが見えてくるんじゃないですか?」という観点でお話させていただきます。

 

今、私たちは働き方や価値観など、これまで「常識」とされていたものが劇的に変わりつつある社会の中に生きています。昨今の「働き方改革」をはじめ、「あ~時代は変わりつつあるのかなあ」とニュース等で耳にして、実感がなくとも既にご存知の方も多くいらっしゃると思います。今の不登校である中高生が、大人になって働く20~30年後など、私たち大人でも想像できない社会が待ち受けていることでしょう。例えば、在宅勤務(テレワーク)が当たり前になっていたり、複業して、フリーランスのように少人数で自分と合う人たちだけで働くという働き方も普通になっているかもしれません。現に私自身、今、30代前半ですが、周りには子どもの頃には知らなかった職業や働き方をしている人たちが本当に多くいます。そういう方々に自分が関わっている不登校のお子さんに会ってもらい、話したりすると、「面白い発想しているね」等、ウケが良いことが多いのです。これまでの「常識」であった「『終身雇用』の安心安全を保証するので、嫌な人間関係や理不尽なことがあっても我慢して耐えなさい」という価値観が少しずつ通用しなくなってきており、それよりも「将来は保証されていないんだから、今を楽しく・面白く生きた方がいいじゃないか」という価値観が20~30代をはじめ、どんどん大きくなっているように感じますし、それは日本だけでなく、世界の潮流でもあるようです。(多くの中間管理職の方が部下の育成に悩まれているのも、この価値観の違いが大きく関連しているみたいです。)

 

ここで私が何を言いたいかというと、いま世の中が「我慢」よりも「クリエイティビティ」や「発想の豊かさ」に価値を置きはじめているという「現実」から、今の不登校やひきこもりという状態を見てみたいということです。WHO(世界保健機関)は、このような時代の移り変わりに子ども達が将来、社会でいきいきと生きていけるように、これからの時代に必要なライフスキルを10項目掲げ、1994年に各国の学校の教育課程に、このライフスキルの修得を導入することを提案しています。その ライフスキルとは、日常的に起こる様々な問題や要求に対して、より建設的かつ効果的に対処するためのスキルと位置づけており、 「①意志スキル ②問題解決スキル ③創造的思考 ④批判的思考 ⑤コミュニケーションスキル ⑥対人関係スキル ⑦自己認知 ⑧共感的理解 ⑨情動に対処するスキル ⑩ストレスに対処するスキル」の10項目を掲げています。おそらく、「不登校」という状態から親御様がご心配されるのは、「⑤コミュニケーションスキル」や「⑥対人関係スキル」の部分でしょう。一方、これは私自身の経験なのですが、この10項目の中で、特に「③創造的思考」「④批判的思考」「⑧共感的理解」が非常に高いお子様が不登校に多いように感じるのです。部屋で絵を描いていたり、ライトノーベルを読んで主人公の思いに耽ったり、「結構、これからの社会に必要な力を磨いているな~」と感じるお子様に会うことがよくあるのです。「そんな絵ばっか描いてないで勉強でもしたらどうなの?」と仰る親御様をみると、「お母さん、この子、ライフスキルの一つをちゃんと磨いていますよ」と、これからの時代に必要な10種のライフスキルを知っている分、少し勿体なく思ってしまうのです。

 

今、角川ドワンゴ学園N中等部・高等学校様がこのライフスキルの観点から「21世紀型スキル学習」のプログラムを開発されており、私自身、2019年11月からこのプログラムの監修に携わっていますが、ポジティブサイコロジーの「強み」だけでなく、デザイン思考や探索学習だったり、とても画期的で面白く、「これからの社会」に合わせた取り組みでとても感銘を受けています。勿論、国数英理社という教科が無くなることはありませんが、これからの教育はもっと教科も多様化され(実際に欧米圏では科目も選択制ですよね)、今、不登校のお子様が家の中でされていることも逆に評価されはじめる時代がくるんじゃないかなと思っています(し、結構、これは確信しています)。

 

ストレングス協会では、このWHOが掲げる「ライフスキル」を重要視しています。なぜなら、今の子ども達が実際に生きる「これからの社会」の準備をサポートすることこそ、我われ大人の役割だと思うからです。そのために、私たちは不登校や引きこもりのお子様と一緒に、自分の「強み」を理解し(⑦自己認知)、その「強み」を活かして、どのように問題を解決するか(②問題解決スキル)、情動やストレスに対処するか(⑨, ⑩)、自分ならではのコミュニケーションの取り方をしていくか(⑤)等を話し合い、実践に結びつけられるようサポートすることにフォーカスしています。話が少し飛躍してしまいましたが、今、目の前にいる不登校やひきこもりのお子様がしていることで、この「ライフスキル」(特に「創造的思考」)に繋がる要素がないか、一度、観察してみてはいかがでしょうか?ひょっとすると、これまでの不登校のお子様の過ごし方に対する見方が少し変わるかもしれませんし、そこから意味のある対話が生まれるかもしれません。勿論、お子様の日々の過ごし方や不登校やひきこもりの状態になった背景がそれぞれ異なるため、一概には言えませんが、何か「ピン」とこられた親御様がいらっしゃいましたら、「まさにそれですよ、お母さん!」と、一度、お話したいですね。