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「脱ひきこもり」お役立ちコラム

不登校になる理由が分からないとき

松隈 信一郎(医学博士/公認心理師)

福岡県出身。慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程にて幸福感や強み等、人間のプラス面を科学するポジティブサイコロジーを研究。在学中より従来のカウンセリングではない、ポジティブサイコロジーを応用した解決志向アプローチによる不登校・ひきこもり支援の可能性を見出す。その後、一般社団法人ストレングス協会を設立。10代、20代の若者に特化した訪問支援と教員・保護者へのポジティブサイコロジーの教育を通して、世界中の青年が希望をもてる社会の実現に向けて活動を続ける。著書に『ポジティブサイコロジー:不登校・ひきこもり支援の新しいカタチ』(金剛出版)、『「強み」の見出し方』(「月刊精神科」2017年7月号)等。

 

4月に新しい気持ちで入学した中学校、高校、専門学校や大学で、または進級した新しいクラスに馴染めず、4月当時の気持ちが続かずに不登校になっていくケースというのが毎年6月に多くなります。個人的には不登校であろうとなかろうと、人には様々な成長のプロセスがあるため、「不登校である」ということに関しては問題だと特に思っていませんが、どうもこの国にいると、同学年の子達と違うことをしていると「この子はおかしいのではないか」と周囲の親御さんもお子さん自身も思い込んでしまい、負のスパイラルに陥ってしまうことがよくあります。今回のコラムではお子様が不登校になる理由や不登校になった理由が分からない時に避けるべき行動、そしてどのように接すればよいかについて書いてみたいと思います。勿論、一人一人、状況が異なりますので、参考までにお読み頂けたらと存じます。

原因を追求して、犯人を探さない

まず、不登校になる理由に関してお話していこうと思います・・・と書き綴っていこうと試みたのですが、正直、ここで専門家ヅラをして「子どもが不登校になる理由は〇つあり、1つ目は・・・」と書いていく気にどうしてもなれませんでした。それは「一人一人、不登校になる理由は異なるから」という表面上の理由よりも、もっと根本的な部分での前提が一般的な「不登校」の見方と異なるからなのだろうと思います。一般的な「不登校」の見方とは、不登校を①問題と捉え、②問題の原因を探り、③原因が見つかれば、それを直すという見方です。このように原因や理由を見つけて直す、修正するというアプローチを「医学(病理)モデル」と呼びます。このアプローチは病原菌を特定して抗生物質で治したり、機械の故障理由を見つけて修理したり、明らかに客観的な因果関係がある場合には非常に有効なアプローチです。ですから、人が「問題だ」と認識したものはまずは原因を調べようとするのは、この枠の中で考えると理に適っています。

 

しかし、この医学モデルで「不登校」という現象を考えていると、ご家庭内で原因や犯人探しになってしまうことがよくあります。例えば、父親が常に仕事で家にいないため、母親に子育てを任せている、そして子どもが不登校になって引きこもった時、「なんであんなことになったんだ?」と母親を責める。母親は「なんで学校に行かないの?」と子どもを責める。子どもは両親が自分をずっと理解してくれていないと「こうなったのは親のせいだ」と両親を責める・・・。このように家族全員が他人のせいにして、悪循環が生じ、それが維持され続けてしまうがよく起きます。そのため、不登校を「何がこの問題の原因なのか?」を追求し続ける限り、蟻地獄のようになってしまうことがあります。

普段と違ったことを2週間、試してみる

もし、今、お子様が不登校でその理由が分からない、そして、「今、悪循環が起きている」と思われる方がいらっしゃれば、誰かを責めることをやめて、冷静に「子どもがAをした時に、私がBする。その結果、子どもがCする。それに対して、私がDする」とご家庭内のコミュニケーションで起きていることを「A→B→C」と具体的に紙に書いてみることをお勧めします。そして、今、どのような悪循環が起きているかを把握して、ご自身の言動・行動をいつものパターンと変えてみてください。普段は子どもがずっとゲームをしているから、すぐに「やめなさい」と言っていたけど、「何時までするの?」と言葉を変えてみよう。普段、食卓で子どもと会話がないけど、テレビの話をふってみよう・・・。何でも構いません。ポイントは普段と違ったことを試してみるという点です。これまで、もしかすると「よかれ」と思って解決のために努力していたことが、逆に問題を維持しているということはよくあるお話です。そのため、同じことをやるのではなく、違うことをやってみることが非常に重要になってきます。うまくやろうと思う必要はありませんので、2週間、実験のつもりで試してみてください。

 

アインシュタインが遺した格言に「狂気とは即ち、同じことを繰り返し行い、違う結果を期待することである」という言葉があります。原因を探り、親が悪い、子が悪いというお話ではなく、あくまでも「循環」ですので、そこから逸脱するために、どんなに些細なことでも構いません、変わる意思のある人が違うことをやりましょう。子どもが言ってきたことを2週間、否定せずに聴いてみる。いつも「早く寝なさい」と言っていたのを言わずに「お休み」とだけ言ってみる。子どものことで頭がいっぱいだったので、ちょっと自分の自分が楽しむ時間をとってみる・・・。ご自身がやれることは必ずあります。たまに「頭ではわかるんですけど、できないんです」と仰られる親御様もいらっしゃいますが、それはお子さんも一緒です。できないのか、したくないのか。できないことはする必要ありませんので、本当はしたくないけど、してもいいと思う違ったことをやってみてください。

今後も継続してほしいことも明確にする

最後に、今の状況で起きていることのうち、今後も続けておきてほしいことも洗い出しましょう。どうしても、悩んでいる時、人はマイナスの方ばかりが頭に出てきて、普段起きているプラスの出来事に気づけず、足元に転がっている「解決のヒント」を見過ごしてしまいがちです。「週末に話しかけると、平日よりも比較的に元気よく返事が返ってくるなあ。何でだろう?」「この前、自分のことをよく話してくれたけど、何がいつもと違かったんだろう?」と、先程の「悪循環」と同じように、プラスの出来事の「好循環」も明確にし、それが続くように同じ行動をしていきたいところです。今、うまくいっていることはそのまま続ける。うまくいっていないことは違った行動を試みる。この実験と振り返りの繰り返しによって、ご家庭内にある「循環」を良い方向へと進めていければと思っています。もしご自身だけでは冷静にその循環が分からないのであれば、ぜひ保護者支援を通して、まずはご家庭内にどのような「悪循環」が起きているのか、いつ「好循環」になる機会があるのかを一緒に分析していきましょう。保護者支援はコチラ