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「脱ひきこもり」お役立ちコラム

ひきこもりへの「訪問支援」って何をするんですか?

松隈 信一郎(医学博士/公認心理師)

福岡県出身。慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程にて幸福感や強み等、人間のプラス面を科学するポジティブサイコロジーを研究。在学中より従来のカウンセリングではない、ポジティブサイコロジーによる不登校・ひきこもり支援の可能性を見出す。その後、一般社団法人ストレングス協会を設立。10代、20代の若者に特化した訪問支援と教員・保護者へのポジティブサイコロジーの教育を通して、世界中の青少年が希望をもてる社会の実現に向けて活動を続ける。著書に『「強み」の見出し方』(「月刊精神科」2017年7月号)等。

 

訪問支援の種類

よく「訪問支援」が具体的に何をするのかイメージが湧かないというお問い合わせを頂きますので、今回、ここで不登校やひきこもりのお子様への「訪問支援」とはどういうものかについてお話させて頂きたいと思います。まずは、大きく分けて三種類あり、各支援団体の訪問支援も、いずれかに当てはまるのではないかと思います。

 

 ① 引き出し屋

こちらは長年、部屋に閉じこもり、親子間の会話もない状態の時、第三者が入って説得して、各業者が運営する自立支援施設に連れていくというものです。よくテレビや雑誌でも暴力によって連れ出して問題になっている類いのものです。

 

② 本人には会えないけれど伺う

長年引きこもっており、ひきこもりの本人には会えない状態で、親御さんと会い、お話をしてドア越しに手紙を置いたり、声をかけて帰る形態で数年かけて関わるスタンスで支援が行われます。

 

③ 親が勧めてもカウンセリングに行けないから家まで来てもらう

心理的な不調があったり、今後どうすればいいか分からなくなって、思考を停止させていたり、親御様が心療内科に行ってみたらと言っても、本人は行く気がなかったり、行っても途中で止めたりしている状態で、外に出るのは難しいけれど、家の中であれば会うことができる、もしくは、タイミング次第で一度くらいであれば家で会えるという状態でカウンセラーが心療内科ではなく、ご自宅でカウンセリングを行う支援です。

 

ストレングス協会は家まで伺い、お子様と作戦会議をする

ストレングス協会の訪問支援は③の支援内容になります。なぜ、この形態をとっているかというと、「① 引き出し屋」はお子様の人権を無視した形で行われると私は認識しており、人の心に土足で踏み入ることをしたくないという価値観があるため、このやり方は行いません。もし、ひきこもりのお子様本人の更正だけに焦点を置かれ、強制的にどうにかしたいと思われているのであれば、当協会は対象外にして頂ければと思います。

 

一般的な訪問支援は「② 本人に会えないけれど伺う」がメインのように感じております。心理士やソーシャルワーカーでなくとも、ボランティアの方や大学生などが訪問し、長期間かけてご家庭に関わっていくという支援ですが、当協会は親御様との面談は電話・zoomの形でさせて頂いています。理由は2点です。1つ目の理由は、10代・20代でひきこもり状態から前に進み出すためには、親子関係が肝であり、親御様の関わり方に関するご相談はご自宅で行う必要はないということ、そして、2つ目は不登校やひきこもりのお子様の立場からみると、赤の他人が自分のプライベートな空間に入ってきて、親の視点からみた自分について悩み相談をされているの、個人的にものすごく嫌だなあと感じるからです。往々にしてあることですが、親御さんが思っているお子様と、お子様自身が思うお子様自身は異なります。「うちの子は真面目で」と親御様は仰っていても、お子様に伺うと「親が厳しくなんでも言うことを聞かせようとするから真面目にしている」と親御様のレンズを通してみた自分にはギャップがあると感じている子、非常に多いのです。お子様がそう思っている中で、あたかも自分が悪く、どうやって修理をしようかという話をドアの向こうでしていると思うと逆の立場だったら本当に嫌だなと。

 

また、ただ伺うだけで訪問を終わり、数年かけて訪問されることもあると伺っておりますが、親御さんも支援者も「なあなあ」になり、いい意味での緊張感がなくなることもよくあります。親御様もなんとか第三者に直接、解決してもらえないかと考えて、ご自身で努力することがなくなったり、支援者も人の子ですから、変化のない環境に足を運びすぎるとだれてくるのも無理もないと思います。また、厚労省の「ひきこもりの評価・支援のガイドライン」には、会えなくても通い続けて、支援者が「会いたい」という想いを伝え続けた方がよいという記載がありますが、会えなくても長年通い続けた方が良い結果が生まれるというエビデンスは今のところ、存在しません。お子様が部屋に引きこもり、出てこない、会話が全くない状態であれば、親子間で進路のことではなく、まずは何気ない他愛もない「普通」の会話ができるようになることが大切なことですので、親御様とはお電話にてコーチングをさせて頂いております。また、「普通」の会話ができているけれど、いざ進路の話をしようとしたら逃げられるというご家庭も多いのではないかと思います。そのような状況であれば、親御様の関わり次第で不登校や引きこもりのお子様も第三者に会うことはできると考えています。もしそのような状態であれば、「一度くらい会ってみない?食べてみないと美味しいか美味しくないかわからないし、あなたの過去にあったこととか自分が嫌なら話す必要ないから」と促していただけたらと思います。

 

ストレングス協会は③の形態で支援をさせて頂いておりますが、当協会の特徴として、一般的に言われる「カウンセリング」を行っていないことが挙げられるかもしれません。引きこもりになった過去の出来事や原因を伺い、「そうか、辛かったね」とただ傾聴して、共感して癒していくということを主軸にしていないのが、他の支援団体様と異なる点かもしれません。当協会は不登校やひきこもりのお子様を「癒す」ことを目的にしていません。それよりも、「自己理解を深めて、自律的に行動できるようになること」を目的としているため、どんな時に嬉しいと感じるのか、楽しいと感じるのか、活力が湧いてくるのか等を伺い、「この子が水を得た魚のようになるためには何が必要だろう」という観点で様々な質問をしたり、強み診断テストを受けてもらい、多角的に自己理解を深めることを対話を通して行っていきます。そして、浮き彫りになってきた自分の「強み」というリソースを考慮して、この先、どのような道に進んでいくかを作戦会議していきます。とても未来志向で進めていくのですが、それは「過去の原因を追究すること」と「今の状況が改善されること」は必ずしも繋がっていないということが明らかになっているからです。特に10代後半から20代の不登校やひきこもりのお子様に多いのが、色々一人で考えた挙句、どうすればいいのか分からなくなり、あえて思考を停止している子があまりにも多い印象を持っています。過去のひきこもりになった原因を根掘り葉掘り聞くことよりも、「あなたは今、どんなアイテムを持っていて、それを基にどんな実験をしていこうか?」という方向で話を進めていった方が、思考が再び動き出すことが多いのです。

 

勿論、将来のポジティブなことばかりを見て、対人関係が苦手であるとか、人の目が気になる等、これから前に進もうとする足を止めるネガティブな思考や感情を無視していては前に進めません。お子様の症状に合わせる形で、ネガティブな思考や感情への対処法を教え、実験してもらうことも同時に行っています。この点に関して、認知行動療法的なアプローチも行い、ポジティブな側面を伸ばし、ネガティブな側面を対処していくアプローチでバランスよく関わり、プラスの割合を増やしていくことを目指しています。

 

「オタク気質」「理屈っぽい」「優しい」「真面目」は特に相性がいい

不登校やひきこもりのお子様が前に進み出す上で、唯一の絶対的なアプローチは存在しません。その中で、これまで関わってきた不登校やひきこもりのお子様やご家庭を思い返すに、質問が多くなる面談になるため、例えば、「なんでそのゲームが好きなの?」と伺った時に、「分からない」と答えるだけのお子様だと当協会の訪問支援は相性が良くないと思います。(そのため、小学生の不登校に関しては対象にしていません。)一方、自分の好きなゲームのキャラクター等を熱く語り出すオタク気質のお子様や、「ああいやこういう」、ある意味、理屈っぽいお子様は大抵、相性がいいです。(笑)また、性格が優しくて真面目なお子様とも相性がいいイメージを持っています。こちらの質問に対して、ちゃんと答えようとしてくれるからでしょう。様々な角度から質問を投げかけるコーチングによって、新たな気づきや可能性に自分自身で気づいていく、その道筋をガイドしていく面談になりますので、もし、そのような訪問支援にご関心がある方はお気軽にご連絡頂ければと思います。