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「脱ひきこもり」お役立ちコラム

【コロナ特集】コロナ後の学校再開時に不登校になりそうなお子様との向き合い方

松隈 信一郎(医学博士/公認心理師)

福岡県出身。慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程にて幸福感や強み等、人間のプラス面を科学するポジティブサイコロジーを研究。在学中より従来のカウンセリングではない、ポジティブサイコロジーによる不登校・ひきこもり支援の可能性を見出す。その後、一般社団法人ストレングス協会を設立。10代、20代の若者に特化した訪問支援と教員・保護者へのポジティブサイコロジーの教育を通して、世界中の青少年が希望をもてる社会の実現に向けて活動を続ける。著書に『「強み」の見出し方』(「月刊精神科」2017年7月号)等。

 

新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が解除され、各都道府県の学校も再開して数週間が経過します。ゴールデンウィークや夏休み明けに不登校が増えるように、これまでの生活から変化があるこの時期に、なかなか調子を取り戻せないお子様や体調を崩されるお子様も多いのではないかと思います。特に今回の休校はゴールデンウィークや夏休み等と異なり、急に再開したものなので、心も体も変化に順応できないこともあるようです。また、このコロナによる休校の前から学校に馴染めていなかったお子様にとっては余計にその負荷も高いでしょう。特に慎重なお子さんにとっては、密集している教室や交通機関での移動を懸念してしまいます。また、大人である我々も今の生活、結構しんどいですよね。生活が変わったこと、感染する恐れがあること、この「曖昧な環境」で居続けることはストレスがかかることです。様々な経験を積んでいる我々、大人でもそのようにストレスを感じているわけですから、経験値が少なく、そして産まれた時から便利で快適な生活しか知らない彼らにとってはこの曖昧で急速な変化に順応しないといけないことは結構、酷なことかもしれません。

 

ちょっと余談になりますが、私自身、20代の頃、フィリピンのスラム街や台風の被災地という過酷な環境で生きている人たちと共に現地で生活していたことがあります。日本と異なり、「便利」で「快適」という言葉が見当たらない、毎日が「曖昧な環境」で生きている人たちはいかに過酷な環境でも楽しく暮らせるかという工夫を多くされていました。家族でとても些細なことでもジョークを言い合ったり、笑い合ったり、神聖なものに祈りを捧げて、協力し合ったり・・・、快適で便利な世界で生きてきた自分にとって、そのとてつもない「人間の強さ」に感動したことがありました。政治の腐敗により、変えられない環境の中で、いかに楽しく過ごせるか、そういう認知や捉え方の訓練を日常生活で否応なくさせられ、それが自然と身に付いていたのでしょう。日本の「がばいばあちゃん」の知恵に近いものかもしれません。今、私たちはここから多くのことを学ぶ必要があると思うのです。

 

経済的な発展と共に生活は便利で快適になった一方、私たち、人間はひ弱になってきたことは否めません。今、私たちは感情に振り回されるのではなく、一人一人が頭を働かせて理性的に工夫して生きていかなければなりません。良くも悪くも今の環境を受け入れて、その中でいかに楽しむかを意図的に工夫すること、他人と繋がること、自分でコントロールできる範囲のことをやり、お天道様に身を委ねること、そして、なによりも期待値を下げること。期待するから、その通りにいかないと落ち込む、期待したことが起きないかもしれないから不安になる、期待通りに事が進まないから怒りが湧き起こる・・・。ある意味、「落ち込み」「不安」「怒り」という三大ネガティブ感情は、期待するから湧いてくる感情なのかもしれません。

 

以前、大学時代のラグビー部の先輩で今、総合商社で働いている先輩に良好な人間関係をつくる秘訣を尋ねたことがありました。そしたら、「俺はある意味、超ネガティブ思考で、人を信用してないから、やってくれた時、めちゃくちゃ感謝できる。その感謝が大事」と仰られていました。期待していないから、プラスのことが見えてくる、「なるほど!」と目から鱗でした。

 

学校の今後の動向に関しても、コロナの第二波に関しても、誰もこの先、どのような世界が待ち受けているのか正確にわかっている人は誰一人存在しません。一方、期待値を下げること、期待を手放すことは自分のコントロールの範囲でできることです。白黒で分けられない曖昧な環境に生きているからこそ、期待値を上げたままでいると苦しくなります。「苦しみたくないけど期待したい」というのは、特に今の時期において、「オモチャが欲しいけど、お金を失いたくない」というお話と似たような部分があると思います。お子さんも皆さんも今、曖昧な環境で生きているからこそ、ちょっと期待値を下げて暮らしてみるのはいかがでしょうか?